起業のパターン

2013/10/07 00:11

消費税の増税が決まり、社会保険の料率も上がり、健康保険の料率も上がっている。人件費にまつわる経費は、年々増加をたどる中で、ITのハードやソフトの進化でホワイトカラーの生産性は向上している。おまけに経済と労働力のグローバル化で低いスキルでも出来るレベルの仕事はどんどん国内からは無くなっている。そこを既存の会社同士で取り合いになるから、価格は低下するという悪循環。

国はデフレの元凶は給与が上がらないことだと言うが、給与は労働者あたりの付加価値が増大しなければ上がりようがないので、ほとんどの普通の会社にとっては、給与を引き上げるというハードルは高くなるばかりである。(付加価値の向上以上に、国に召し上げられるコストの上昇の方が早い。日本は消費税率が低いというが、企業負担分の社会保険料や失業保険、健康保険などを加えればすでに30%以上は、徴収されており、所得の自由度は国際的に見ても十分低い。)

我々が起業した頃は、まだ知的な仕事といえども単純労働部分が多くあり、これが雇用を支える仕事として成立していた。今、ほんどの仕事はパソコンと通信環境があれば済むようになっている。

こういう世の中になってくると、起業のあり方そのものも変わってこざるを得ない。

今、考えられる起業のパターンを挙げてみよう。

 

1)ビジネスモデル型

新たなサービスを発案し、標準化することで、成功パターンを拡大・再生産していく。起業の王道。

マスになる市場は大手が参入してくるので、そこそこのマーケットサイズで、どちらかと言えばニッチ的な市場を掘り下げる方が成功確率が高いと考えられている。

しかし、このパターンにおいても、いきなり、店舗をつくるとか、売れるかどうかわからない商品の在庫を抱えるということは時代遅れになりつつあり、主にネット環境を使って、トライアンドエラーを短期間に繰り返すアジャイル型のビジネス開発でないと、多様化し、変化の激しい市場に対応できないといわれている。

それに大企業が成長分野を求めて、徐々にニッチ市場へも参入する度合いが高まっている。

 

2)スキル型

自分の専門的な技能・スキルで独立していく。ほんの10年位前までは、2つか、3つの専門領域をうまく組み合わせると、比較的競合の少ない自分オリジナルの業務領域を生み出せたものだが、今は情報の伝達スピードが速く、直ぐに追いつかれやすくなっているし、専門的な人材自体も探しやすくなっている。圧倒的に高いスキルがあるか、人脈か、組織に入るかしなければ、これもまた難しい。

このスキル型の企業は、大変苦しんでいるところが多いが、人材をじっくり育てる余裕がなくなっているのだと思う。出来る者同士の緩やかなネットワークでないと、なかなか保てない。スキル型の企業は一つの組織というよりも、段々と会社という器を共有しながら、自己責任で仕事をしていくビジネスインキュペート的な形態にシフトとていくだろう。

 

3)系列型

分かりやすいのは出資を受けるなどして、ある程度、強制的に受託の関係を付くってしまうパターン。一時期、大企業のビジネスモデルとして多角化が流行した頃は、この仕組みが旨く働いていたが、今やアウトソーシング型の関連会社は、利権商売のような見方をされ、むしろ排除される傾向にある。「実力があるというなら、一般市場から顧客を取ってこい。」という話になるので、これでは系列である意味そのものがない。

 

4)ソーシャルワーキング型

NPOなど、特定の社会貢献と連動した起業。社会的な支援や広がりを得やすい。これも収益が上がり、成長起動に乗せられるところまで行くのは数が少ない。低収益期間が長く、専任の雇用もしにくい。柱になるビジネスをやりながら、それのプラスアルファとして続けながら、できるだけ本業に対する好影響を生み出すようにするのが精一杯のように見える。

いずれを選択するにせよ、起業のハードルは上がるばかりであり、会社を維持していくことも小規模な企業であればあるほど、難しくなっている。

ワークライフバランスが大切なことは理解出来るが、ワークがなくなれば、ライフだって木っ端微塵になる。

これからの会社は、顧客のことを真剣に考え、高い付加価値を生み出せる社員だけに絞った少数精鋭型のリーンな組織であることが、生き残りの第1条件になっていくだろう。起業も予めそのような考え方を折り込んだものでなければならない。組織的に成長させることが出来るのは、ビジネスモデル型で、その完成度が高まった場合だと、認識しておく必要がある。

 


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