仕事柄ホテルに宿泊することが多く、様々なパターンの宿泊施設に泊まってきて、さらに最近はホテル事業に対するマーケティング調査と経営シミュレーションをサポートするようになってきたことで、従来型のホテル事業の収益評価モデルに不足している視点があるように感じている。
それは端的に言えば㎡あたり売上高という小売り業で言えばごく当たり前の視点である。ホテル業界の指標には、ADR(Average Daily Rate,平均客室単価)やOCC(Occupancy Ratio,客室稼働率)、RevPAR(Revenue Per Available Room、販売可能客室あたり売上高。つまりADRにOCCをかけ算すればRevParになる)あたりを見て、売上を推計し、経費を差し引いて収益力を評価するというプロセスをやっていくことになるが、最近ではホテルとしての運営方法が多様化し、一通りの比較では済まなくなっている。
その際に必要になってくるのが、坪あたりの宿泊料売上高である。
例えば18㎡のシングルと、36㎡のツインではグロス金額ではツインの方が大きくなるものの宿泊する側の心理としては一人当り宿泊料は安く設定されていないと納得できないだろう。(室料としては㎡単価を合わせて、清掃・リネンなどのオペーレーションコストで調整することはありえるが、それほど明確な差をつけることは難しいのではないか。)㎡単価を上げやすいのは簡易宿泊所といわれるもので、これは基本1室に複数の顧客が寝泊まりするという考え方である。いわゆるカプセルホテルの考え方は大部屋に、沢山で宿泊しているイメージである。
顧客の視点でいうと9000円のビジネスホテルと、4,500円のカプセルホテルなら、寝るだけならカプセルで費用を浮かせたいと思うが、1室あたりに床面積は1/3とか、1/4になってしまうので、ホテル側の売上が大きく伸びることになる。
これは納骨堂ビジネスなどでも応用され、30cm四方程度の納骨堂が80万円等で売られているが、床の坪単価にすると数千万円になったりする。また、賃貸住宅や分譲マンションでも坪当り単価は狭くなるほど高くなるのが一般的で、儲けを出すという視点からは狭い方が効率がよいということになる。最近は世帯の少人数化の影響で、狭い部屋の方が空室率も下げやすい傾向はある。
もちろんカプセルホテルの場合は、共用施設としての洗面所とかシャワールームが必要なので、販売床面積自体は少なくなるが、それを差し引いても売上額は高いだろう。
そういう背景で、最近では単価をより高くできるラグジュアリー型のカプセルホテルが増加している。
もっとも宿泊をカプセルで良しとする層は、今でもニッチ層なので、基本は独室した客室としてのホテルを計画をすることになるが、それにしても面積割りをどうするかということは、収益性と快適性のバランスで非常に難しく、稼働率や単価にも影響するため慎重に検討する必要がある。
そのため客室坪単価と経費率、稼働率を簡易的にシミュレーションし、収益性の最大化するポイントを判定した上で、事業計画の詳細まで踏み込んでいくという手順が必要になっている。競争の激しいエリアでは、そういう詳細なマーケティングが必要になっていくだろう。
ホテル経営としては、平日のビジネス客、週末の観光客が両方とれることが理想だが、そうするとシングルとツインの構成が難しい。最近では、4~6人の宿泊をターゲットとしたファミリー型ホテルが民泊に対抗して増加しているが、より立地特性に合ったターゲット設定を細かく行うマーケティングが重要になっていく。
2018/10/26 09:25
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