最近、働き方改革の視点から社員の意識調査をお手伝いすることも増えてきている。その際に重要な指標となっているのが、ワーク・エンゲイジメントであるが、意外と曖昧に捉えられていることも多い。
エンゲイジメントとは絆という意味合いで、消費者とサービスを提供する企業との間の関係性にもよく使われているが、社員と会社(あるいは仕事)という文脈では、「熱意」(誇りややりがい)、「没頭」(熱意や集中)、「活力」(積極性)という要素で構成されている。
しかし、リーダーがこのような業務に対する積極的な態度のみを求め続けると、部下はワーカホリズムという脅迫的衝動による業務が常態化し、いずれバーンアウトという状態に陥ってしまう。それを防止する意味合いでワークライフバランスによる業務量・就労時間の適性化が求められているが、エンゲイジメントという視点からは、それだけでは解決できない要素を含んでいる。
エンゲイジメントと密接に関わる要素として重要視されているものがスライヴィング(学習する力)である。この意味するところは、「自分自身の成長に向かって進歩している、或いは前進しているという感覚」であり、自分の与えられた業務においてこのようなスライヴィングが充分確保された状態で、ワーク・エンゲイジメントとワークライフバランスが実現しているという状態が職場環境としては最適なものになる。
このような状態が実現することで、職員の創造的な能力が高まり、生産性が向上することも徐々に検証されつつある。
スポーツにおいても、長時間の練習が必ずしも競技のパフォーマンス向上につながらないことが認知されてきたが、職場においても今そこにいる人材のパフォーマンスの最大化という課題は、今後の企業活動においても中核的な取組み要素になっていくだろう。社員の評価を労働時間の長さについ求めてしまうのは、経営者、リーダーの怠慢でしかない。
参考文献:「ワーク・エンゲイジメント 基本理論と研究のためのハンドブック」星和書店 著者:アーノルド・B・バッカー 他
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