戦うフィールドをシフトする

2011/07/19 19:02

なでしこジャパンの活躍は久しぶりに爽快な出来事だったが、マーケティング的に見てもとても参考になる。

体格面で大きなハンディのある日本人として勝つためには、欧州勢と異なる戦いのフィールドに持ち込んで、相手の強みを殺してしまう必要がある。前半をディフェンス重視で持ちこたえながら相手の手鼻をくじき、早いパス回しで相手の体力を消耗させた上で、ゴール前のミスを誘い出すという戦略はマーケティング的にも教科書的なお手本といっていいだろう。

例えば居酒屋の出店戦略を考えたとき、繁華街の中心部は大手チェーン店や有名店に抑えられている。こういうところで、互角な戦いをしようと思うと企業としての体力を消耗し、結果的に耐えられずに撤退に至るケースが多い。むしろ大手の進出しない郊外駅前などで、ファミリー層やビジネス客、学生などを広く集客し、安定した稼働率を確保するという「戦うフィールドのシフト」が必要である。

しかし、女子サッカーもいずれは、長いパスからカウンター攻撃という欧米型から、短いパスでボールを支配しながら、チャンスの確率を高めていく日本型のサッカーに転換していくだろう。それは自分のフィルードに相手が参戦してくるということであり、マーケティングの分野でも中小企業が切り開いたマーケットの成功モデルを大企業が一気に模倣して、つぶしてくことはよく見られる。そのためには、先ほどの居酒屋の例であれば、一つひとつの出店において、地域No1を最初から目指しておくことが必要だろう。競争がないからといって中途半端な出店をしてしまうと、少し強い競合が現れるとたちまち売上不振に陥る。後々の競合出店を予想し、相対的な優位性(立地、規模、価格、店づくり、品質など)を保ち、地域の基本的な需要を抑え、他社が出店の魅力を感じないまで、地域のシェアを抑えておく必要がある。(シフトしたフィールドにおけるNo1戦略)

居酒屋に限らず、条件に合う物件を探し出すのは、どの業態でも最大の問題である。店舗物件情報について優位に立つためには、立地条件を厳格に絞り込み、地域に根ざしている不動産業者に明確な意思表示を行う必要がある。(自分で見て回ることも必要だが、やはり地元業者からの早い段階での情報提供が一番重要)

女子サッカーに限らず、スポーツはどんどん進歩する。それを常に最先端で追いかけ続けようと思えば、それだけ日常の努力の積み重ねが必要になる。それは脚光を浴びる舞台とは正反対の、地道で孤独な毎日の積み重ねだ。マーケティングもきっとそういう静かな努力の積み重ねの先に、成果が見えてくるものだと思う。


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