トランプ大統領の暴走的な政策にも関わらず好調だった株価もここ数日調整局面になり、いよいよ景気も潮目に来ている感じがあります。
マンションマーケットはリーマンショック以降、供給戸数が半減したまま価格は上昇していく傾向を見せていました。 その価格上昇の背景となったのはアベノミクスによる金融緩和であり、中小デベロッパーを含めて不動産開発資金が確保しやすくなった事と、購入者側の住宅ローン金利が最低水準で推移して、高値のマンションでも返済ベースで見たときに、賃貸住宅の賃料との見合いで割高感が薄れたことにあります。
しかし、昨年秋頃から物件による販売状況が二極化しており、物件の好不調が明確になってきました。
好調物件の要素としては、
1)総合開発、タワー、駅直結といった付加価値の高い物件
2)交通等の条件が不利でも、購入層の予算感にマッチしている物件
3)富裕層が実際に住みたいと思うような特筆できる環境要件のある物件
4)都心部への交通利便性が高く、生活利便性など共稼ぎ世帯や高所得の単身世帯のライフスタイルに合ったコンパクト物件
などで、いずれも場合も、将来的な資産性(中古価格や賃貸需要)に安心感のあることは前提要件となっており、物件価格が高額になればなるほど、リセールバリューが意識されるようです。
東京中心部でも相続税対策などから、希少性の高い物件が売りに出され、坪単価600万円~1,000万円というケースも出てきました。しかし、中心部の物件ではホテルの事業用地として高値買収されるケースが多く、都心高額エリアではホテルと競合しない狭小立地物件が増加しているようです。
ただし、エリアのブランド力が高くても、周辺の建物が接近していたり、駐車場が確保できないなど、富裕層がネックと感じられる要素のある物件は苦戦しています。これは価格が上昇している割に、賃料が安定しているため、投資物件としての収益性が見込めない物件が増加していることも背景にあります。
そういった状況下でも、都心部の好立地物件の供給が出て来る背景として、複数の地権者による等価交換事業について、一般の地権者がその優位性を理解するようになり、合意形成に積極的に協力するようになってきていることも要因としてあげられます。住居の建物が老朽化する中で、新築マンションにスライドできるという点は魅力があるようです。
その一方、不調物件の要素としては、
1)低金利といっても実需層にとって、価格水準が受け入れ難くなっている物件。 周辺物件の価格が上がっているという期待感から高値を付け、消費者の購買力という尺度を見失っている物件は、結局購買力水準まで価格調整を余儀なくされるケースが増加しています。 エリアによって、3,500万円ライン、4,000万円ライン、4,500万円ラインなど上限価格の水準が異なるので、これを無視した値付けでの事業化は難しくなります。その立地から呼び込める商圏の範囲と、商圏内購買層の所得水準への見立てが重要になります。
2)商圏が広くないにも関わらず、マーケットの消化力以上に供給してしまった物件。 土地を売却する方にもブームがあり、ひとつの土地が高値で売却されたという事例が出ると続けざまに周辺から土地売却が進むことがあります。デベロッパーにしては仕入れやすくなりますが、水面下で複数の物件が進行し、一斉に売り出してしまうケースがあり、相場を崩す要因になります。湾岸エリアのタワーなどは首都圏全体が商圏となり、かなりの量を吸引していますが、近郊郊外物件などではマーケットボリュームを見て、先行逃げ切り型の展開をしないと、価格競争に巻き込まれます。
3)大型物件に需要を奪われる物件。 駅直結、タワー、複合開発などの希少性のある大型物件や割安感の在る物件がマーケットに出ている間は、商売にならないというケースも値引パターンに陥りやすくなっています。
拡散する好調エリア
昨年までは、城東エリアが都心への交通アクセスの良さの割に割安感のあるエリアとして人気が出て、価格が最も上昇しているエリアとして注目されました。 今年はそれが横浜の関内などの西方面に広がっている感じがあります。 都心で利便性が高いにもかかわらず坪単価が200万円台に放置されてきたようなエリアでは、グロスを圧縮したコンパクト型のマンションが好調に売れていく展開になると予想しています。
車社会から徒歩社会へ
人のライフスタイルは車での移動生活圏から、徒歩圏でほぼすべての生活要素が完結できる徒歩生活文化圏へと移行しています。そのため供給者側としては、徒歩生活圏、自転車生活圏、沿線生活圏、新幹線・空港へのアクセスを意識した広域生活圏といった多重構造の生活スペース提案を明確に提示することが益々重要になっていくものと思われます。
2018/10/26 09:25
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