アッセンブルからエディットへ

2011/10/16 07:35

「編集」という言葉の意味深さに始めて触れたのは、学生の頃に書店で見かけた松岡正剛が発刊した「遊」という雑誌を見たときである。それ以来「編集する」という行為が、単に誌面を構成するということではなく、様々な意味での情報を有機的につなげ、表現することで、別の新たな意味を創造することだと理解するようになった。ここでいう情報には組織や、ビジネスモデルや新商品といったものも含まれる。

これに対して、アッセンブルは”組み立て”なので、”事前に設計された機能を実現する”というような意味合いになるだろう。そこでは価値創造というよりも、効率性や合理性が重視される。新聞の紙面構成は編集であるものの、行為としてはアッセンブルに近いかもしれない。

我々も企画書や分析報告書を日常的に作成しているが、”編集”という意味合いで合格できるものはまだまだ少ない。”編集”されれた情報には、作り手側の発信する新たな意味が込められ、そこへ向けて全ての情報(言葉、デザイン、構成などの全てのエレメント)が、美しく構成されていなければならない。

最近では”デザイン”という言葉もよく聞かれる。デザインとは「de + sign」であり、従来の記号(sign)の否定・分解(de)を意味するというものである。(紺野登氏「ビジネスのためのデザイン思考」) デザインという言葉は、ニュアンス的に”今までに無かったものを創造する”という意味合いが強いように思うが、これは容易にできることではない。ちょうど先端技術開発に似たところがある。大変な労力が必要だし、成功確率も低い。しかし、成功すれば高く評価される。これに対して”エディット”はリスクが少なく、多くの投資を必要としない。それに状況の変化に合わせて、柔軟な対応が可能である。iPodやiPadにはほとんど新しい技術が使われていないと聞いているが、既存技術から新たな価値を創造したというでは、エディットという意味での成功例である。

身の回りのあらゆる変化のスピードはますます速くなっている。企画書でも、ほんの数日で仕上げることが求められる。しかも大量の情報の中で、価値あるドキュメントを作成するためには”エディット”という意味を深く意識して、身の回りの事象を捉え直していく必要がある。


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