健康・省エネシンポジウムIN大阪に参加してみた。

2013/09/08 09:23

シックハウス規制が最初に折り込まれた平成15年の建築基準法改正は大阪在住の一人の歯科医師の働きかけから始まったことはあまり知られていません。

新築された住宅で自分とお子さんなどご家族がアレルギー症状に悩まされるようになり、大阪府に問い合わせたことがきっかけでした。

普通なら自分の家族の範囲で留まるところですが、その一人の医師は行政を動かし、大学を動かし、医師会や官僚、国会議員まで巻き込みながら大きなムーブメントを起こします。一本の問い合わせ電話からわずか3年で、シックハウス対策のための建築基準法改正施行までこぎつけました。

そして、同じ医師(上原理事長)が起点となって、再び大きなムーブメントへの取り組みが始まっています。

ポイントをまとめてみます。

・健康被害は有害物質だけでなく、住宅の断熱性能も大きく影響している。

・年間では冬に死亡が多く、特に断熱性の低い住宅で高くなる。(断熱性能の違いによる死亡率の差は有意差がある。)

・断熱性能の低い気候の暖かい地方ほど、冬期の室内気温が低く、死亡率が高くなる。

・断熱性能の低い住宅では、浴室やトイレなどの死亡率が高い。

(ヒートショック現象が起きやすい。)

・冬期の断熱性能の低い住宅では、居住者の行動量が減少し、使われない部屋などが増加する。(生活範囲の狭小化と行動量減少による健康状態の悪化)

・日本の住宅性能は欧米と比較して、断熱性能の基準そのものが低い。

(日本の北海道水準がヨーロッパでは普通の水準。次世代省エネの更に上のレベルが必要)

・特に心臓疾患、脳梗塞などの循環器系への影響が大きい。

このまま、現在の断熱レベルで住宅が増加すれば、健康に悪影響のある住宅が増加することになる。断熱性能を推進する政策を行えば、医療費負担の軽減につながり、行政の財政負担も結果的には軽くなる。

最近は太陽光など設備による省エネが推進の核になっているが、断熱性というパッシブな対応は、建築時のコスト負担を受け入れれば、省エネ設備のような更新コストやメンテナンスコストを負担する必要がなく、費用対効果が高い。

 

・その一方で、国に政策策定を働きかけるには、多くのエビデンスが必要である。

そのための来年度へ向けて、調査予算の予算要求が行われ、全国規模での調査が実施される予定である。

 

・今年の2月には「健康・省エネ住宅を推進する議員連盟」が超党派で設立されている。これに呼応して地方の「健康省エネ住宅推進協議会」の設立が進んでいる。(山口、高知、長崎、大阪、北海道、広島、愛知、岐阜、静岡、栃木など)

断熱性と健康の間に統計的に証明されたエビデンスが提供されれば、住宅建設において高断熱住宅の普及が一気に進むようになっていく。

このような調査が現実に実施されれば、世界でも類を見ない大規模で、精度の高い研究成果となる。

 

高断熱住宅が快適で、健康にも良いことは誰もが理解するところだと思いますが、どの程度の断熱性能が、疾患の低下に貢献するのかという科学的・統計的に明確な根拠が示されることにより、費用対効果が明確になり、その結果として日本や世界で作られる住宅が健康に配慮されたものになっていきます。

 

こういう動きが、ひとりの個人からでも起こせるということそのものが驚きでした。

個人で費用を負担したり、休日返上で取り組むなど、エゴを越えた上原理事の活動に多くの人が共感し、活動を支援しようとしています。ソーシャルマーケティングのモデル事例がここにあります。私もわずかではありますが、何か貢献できればと思ったシンポジウムでした。

 


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