生き残り戦略

2011/10/01 06:38

WBS(ワールドビジネスサテライト)でアクアリウムがまたブームになっているという特集を見て、数年前に熱帯魚を飼っていたのを思い出した。初心者でも簡単に飼育できると教えられたグッピー、15匹程度である。幅30cm程度の小さな水槽をキッチンカウンターの片隅に置いていた。

グッピーは一見するとどれも違いはないように見えるが、実は大変な個性の違いがある。大きさや模様といった形状の違いだけでなく、性格の差が大きい。他のグッピーを追いかけ回すものもいれば、物陰に隠れて静かなものもいる。

最も元気なグッピーのグループは好奇心のあまり水槽から飛び出してしまい、死んでしまうものが3匹程度はいたと思う。彼らはこの小さな水槽にいたことが不運で、アマゾンの川にでもいれば、立派なパイオニアとして、新しい住みかを開拓していたことだろう。

グッピーの寿命は3年程度といわれているが、その倍の6年間生きたグッピーが一匹いた。

彼(彼女?)は仲間のグッピーがすべて死んでしまった後、2年間も一匹で悠々と生き続けたのである。

そのグッピーは身体も小さく、性格もいたっておとなしかった。他の魚にちょっかいを出して無駄なエネルギーを使うこともなく、マイペースで生きていた。

こういう個性の差は、企業にも見られるし、個性と自分の置かれてる環境の関係が、その運命に大きく影響することも同じである。

成長段階の社会では、バイオニア的なチャレンジ精神旺盛な企業に、大きく成長する機会があるが、縮小型社会ではリスクを抑制し、最低限の体制で効率運転をしている企業の生き残る確率が高くなる。

マーケティング的な立場からは、リスクを計算しながら、積極的にチャレンジしていくことを推奨することになるが、事業をやっている立場からすれば、失敗すれば、個体としての命がなくなるために、まず生き残ることが最優先になる。特にデフレ型社会では、高コスト体質は命取りになる。マーケッターはクライアントの個性と事業環境を見極めて、取り得るリスクの高さを正確に理解しておく必要がある。ソフトバンクの孫社長は7割読めたらGOをかけるといっていたが、あれほど資金力にゆとりのある企業でも、その程度のリスクしか冒していない。

欧州の信用収縮や新興国からの資金流出など、国内はともより、海外市場も成長は鈍化している。今は成長のためのマーケティングより、生き残るためのマーケティングにウエイトを高めるべき時かもしれない。


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