疾走するドブネズミ

2011/10/02 06:34

ブルーハーツの「リンダ・リンダ」は「ドブネズミみたいに美しくなりたい…」で始まるが、事務所のある天満近くをウロウロしていると本物のドブネズミが路を疾走していくのに出くわすことがある。

衛生的な観点からははなはだよろしくないことではあるが、出くわした瞬間には「よく生き残っているな」と感心してしまう。

少なくとも彼らの周りは敵だらけである。人にも、猫にも発見されれば命を狙われるが、彼らは日々変化する街の隘路を知り尽くし、衛生状態のよくない餌を見つけ出して生き抜いている。

何万円もの金額で取引され、大事に育てられるペットがいる一方で、彼らは誰の力に頼ることもなく、自力で命をつないでいる。

彼らにとっては、そうやって日々戦っていること自体が日常そのものだから、そのことにストレスを感じたり、落ち込むこともなく今日を生きることに集中している。

でもいずれ、このあたりでも彼らを見かけなくなる日が来るのかもしれない。今の人間社会は異質なものを徹底して排除するパワーが徐々に強まっている感じがする。ドブネズミの自立した精神は美しいが、厳しい環境下でドブネズミのままでいることは、いずれ滅亡につながるのである。「滅びの美学」はどこか他の社会の話にしておいてほしい。ドブネズミの生きる姿に学びつつも、ドブネズミ状態から這い上がることが出来なければならない。ドブネズミが疾走している先は、ドブネズミでなくなることである。ブルーハーツだってそうやってメジャーになっていったじゃないか。


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